物語(ものがたり)とは、語り手が語られる主体に、順序だてて語るさまざまな出来事のこと。ナラティブ(英 narrative)、ストーリーとも言われる。虚構作品だけではなく、歴史や新聞記事の中にも見られる。
物語論
文学理論の物語論の観点からは、筋としてまとめられる言説のことをひろく物語ととらえる。「物語言説」「物語内容」「語り」などの視点から研究される。
プロット
プロットとは、小説、戯曲、映画、漫画等の創作物における枠組み、構成のこと。 ストーリーと区別される。
文芸評論では、物語の中で起きている出来事が時間に沿って並べられたものがストーリーであるのに対して、その出来事を再構成したものをプロットと呼ぶ。プロットは時間軸に沿っているとは限らないが、出来事の因果関係を示している。例えば「妻が重い病気になった。夫は毎日泣き暮らすようになった」はストーリー、「夫は毎日泣き暮らすようになった。理由がわからなかったが、妻が重い病気になったからだとわかった」はプロットである、などと説明されることが多い。
プロットとストーリーについては、イギリスの作家E・M・フォースターが1927年に発表した『小説の諸相』での解説が有名である。
元々は、単に筋に関連する出来事がひとつの形を形成したもののことをプロットと呼んだ。アリストテレスが『詩学』で既に「始め・中・終り」の3つに区分するという基本的なプロットについて述べている。この基本的な意味でのプロットという用語は、現代でも小説などの創作の現場でよく使われ、物語を作るときの設計図・構想のことを指す。物語のあらすじ、登場人物の設定や相関図、事件、小道具、世界観などがプロットに含まれる。特にエンターテイメントや長編小説などの構成力を必要とする創作では、プロットを練ることが不可欠であると考えられている。
ストーリー
ストーリーとは、小説、戯曲、映画、漫画等の創作物における筋のこと。 プロットと区別される。ストーリーを簡潔にまとめたものを梗概とも呼ぶ。
物語世界の中で起きている出来事が時間に沿って並べられたものがストーリーであるが、小説などの創作物の作者は、出来事の順序を入れ替えるなどして再構成する。そのため物語世界で順番に起きた出来事が、小説などの中で同じ順番で読者に提示されているとは限らない。推理小説で本当は最初に行われている犯罪のトリックが、再構成されて最後に明かされるのが良い例である。または、「妻が重い病気になった。夫は毎日泣き暮らすようになった」はストーリー、「夫は毎日泣き暮らすようになった。理由がわからなかったが、妻が重い病気になったからだとわかった」はプロットである、などと説明されることが多い。
多くの物語には典型的なストーリーの雛形があり、創作の指標、あるいは研究対象になる。
歴史
日本文学と物語
日記文学や随筆、場合によっては私小説などを含む自照的なもの以外の、他人に向かって語られる作品のことを物語と定義することもある。叙事的な内容のものを指すことが多い。
狭義には『竹取物語』にはじまり鎌倉時代の擬古物語に至る古典の物語文学のことを指す。『伊勢物語』『平中物語』『宇津保物語』『落窪物語』『源氏物語』『栄華物語』『浜松中納言物語』『狭衣物語』『とりかへばや物語』などが挙げられる。
さらに広く、後の軍記物語や説話物語まで含めることもある。『雨月物語』などの戯作までを指すこともできる。また、『お伽草子』などに含まれるおとぎ話や説話、昔話、民話などを漠然と指して物語と呼ぶこともある。
これらの定義にあてはまらないが、たとえば『はてしない物語』のように近現代の作品であっても物語という語をタイトルに含むものは多い。
現存する最古の物語は、古代オリエントの『ギルガメッシュ叙事詩』だと言われている。最長のものは、古代インドの『マハーバーラタ』である。
日本文学においては『竹取物語』が仮名で書かれた最初のいわゆる「物語」であり、紫式部はこれを「物語の出で来始めの祖」と評した。
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